
防衛費5%への引き上げで合意したNATO首脳会合はトランプ外交の「大勝利」。しかし、その自立の行き着く先は?[マーク・ルッテNATO事務総長(左)とトランプ米大統領(右)=2025年6月25日、オランダ・ハーグ](C)AFP=時事
アメリカを「愛されるよりも恐れられる国」にしたいと望んでいる。ブッシュ(子)政権で国家安全保障会議(NSC)の高官などを務めたコリ・シェイク氏は、世界秩序のリード役から降りようとするトランプ外交をそう評します。しかし、そのどちらの感情も国際社会に育つことはないだろう。なぜならこの道を進んだ先のアメリカは、「愛するには残忍すぎるが、恐れるほどの関わりもない」存在だからだ……。アメリカは次第に「なくても済む国」になるとの見立ては辛辣ながら、パートナー国との関係に働く力学を鋭く言い当てているようです。
自助を求めるアメリカに対して、NATO(北大西洋条約機構)加盟各国は防衛費増額で応えました。「大勝利だ(big win)」と上機嫌で会見したドナルド・トランプ大統領でしたが、これも上記の見立てに従えば、むしろ同盟が衰退に向かう「終わりの始まり」になりそうです。NATO各国の国防費合計はアメリカ抜きでもロシアを凌駕し、中国の国防費は日本の6倍に近いというアジアに単純に当てはまる議論ではないものの、このシェイク論考をはじめアメリカの同盟の行方をめぐる考察が並んだ「フォーリン・アフェアーズ」雑誌版最新号はぜひチェックしておきたい内容でした。
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