トランプ政権との関税をめぐる軋轢はブラジル国内の分断をさらに深刻化させかねない[トランプ米大統領とボルソナーロ前大統領を「人民の敵」と糾弾するプラカードを掲げた男性=2025年7月10日、ブラジル・サンパウロ](C)AFP=時事
7月7日に日本など14カ国に新たな関税率を適用(発動は8月1日)すると発表した二日後、ドナルド・トランプ米大統領はさらに8カ国にも同様の措置をとりました。この8カ国の中でも突出しているのは、ブラジルに対する50%です。
米国はブラジルに対して、実は貿易赤字ではありません。そのため4月2日に公表された「相互関税」の税率は、全世界を対象にした基本税率の10%だけでした。これが一気に跳ね上がった背景には、まずは7月6~7日にブラジルがリオデジャネイロで主催したBRICS首脳会議の反米的な声明や、ブラジルと中国の経済的連携が急速に深まっていることがあるでしょう。
ただ、もう一つ注目しておきたいのがブラジル国内政治への関与の意図です。ブラジルの前大統領ジャイール・ボルソナーロ氏は親トランプ姿勢で知られますが、現在、2022年の大統領選での敗北後にクーデターを企てた疑いで起訴されています。トランプ氏はこれについても「魔女狩りだ」と非難、自身のSNSには「LEAVE BOLSONARO ALONE!(ボルソナーロに手を出すな!)」とも投稿しました。米国とブラジルの対立の根本的な原因は貿易ではなく、多国間主義を推進するルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ現大統領に抱いた不満だとの指摘もあります。
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