人民解放軍のAIの軍事利用に関する展望は、「一流の軍隊は戦争を設計し、二流の軍隊は戦争に対応する」という言葉に集約される[中国建国70周年時の軍事パレード=2019年10月1日、中国・北京](C)EPA=時事

 

3.AIの可能性と限界に関する人民解放軍の見解

(1)AIの危険性と限界

 これまで見てきたように、『解放軍報』に掲載された多数の論稿を調査したところ、AIを効果的に適用する分野として状況認識、軍事意思決定、無人兵器、認知域作戦が指摘されている。次に、こうした分野への適用にあたり、AIの危険性と限界に関する『解放軍報』の論稿を概観する。

 多くの論文が、AIの軍事利用の危険性について、以下のような指摘をしている35。無人兵器が制御を失い、人間の操作者の意図に反して行動する危険性がある。また、自律型無人兵器を用いることにより、意図しない先制攻撃のリスクが高まる。AIの学習データに偶発的または人為的な偏りがある場合、AIは誤作動を起こす危険性がある。さらに、AIが意思決定を行うことになれば、意図しない戦争のエスカレーションを招く恐れがある。こうしたことから、暴力的な紛争が頻発し、倫理や国際法に抵触する恐れもある。

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