ジレンマを抱える「民主党のガバナンス構想」

執筆者:富山創一朗2009年9月号

政権奪取後を睨み、統治機構改革案を練る民主党。その心意気やよしだが、この構想は危うさを孕んでいる。 衆院選まであとわずか。このままの勢いでいけば、民主党政権の誕生はほぼ間違いないところだろう。マニフェスト(政権公約)では、子ども手当や高速道路の無料化など様々な政策を打ち出しているが、中でも重要なのが「政権ガバナンス(統治機構)」の一新だ。 民主党のマニフェストにはこうある。「官僚丸投げの政治から政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ」「各省の縦割り省益から官邸主導の国益へ」――。 官僚政治の打破と官邸主導。言うは易く実現は困難を極めることは、ここ数年の公務員制度改革を見れば明らかだ。明治以来の官僚国家にくさびを打ち込もうとすれば、霞が関の抵抗は並大抵ではない。 民主党の官邸主導の切り札、ガバナンスの中核は新設する「国家戦略局」になるという。「官民の優秀な人材を結集して新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する」としている。具体像は今ひとつはっきりしないが、幹部の発言を総合すると以下のような組織になるようだ。経済財政諮問会議との違い 国家戦略局は首相直属の常設機関で、同局のトップには大臣を据える。党の政策と内閣の政策を一元化するため、この大臣が党の政調会長を兼任する。事務局は官僚のほか党職員や民間人を二十―三十人置く。戦略局が基本政策を盛り込んだ予算案の骨格を固め、関係する大臣が出席する「閣僚委員会」で調整し、予算案を決める。

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