『アメリカの対外援助政策―その理念と政策形成―』川口融著アジア経済研究所 1980年刊(現在は古書としてのみ入手可能) アジア経済研究所を創設した初代所長、東畑精一は、「アジ研」を作ったことでなにが達成されたかと訊ねられて、「なにほどのこともないが古書市場で値がつく本を数冊出せたことは嬉しい」と答えている。なにで読んだか忘れてしまったが、さすが大東畑、凡人とはいうことが違うと感服した。 書物の生命は短い。ほとんどの本は数年で寿命が尽きる。本書は一九八〇年に定価四千円で世に出て、いまでは六万円を超す値がついている。この手の本が高価なのは印刷部数が少ないからなのだが、普通はその後古書市場にまわって徐々に値を下げていくものだ。だから、川口氏が書いたこの本は特別なのである。 著者である川口融氏は川口順子元外務大臣の夫であり、通産官僚であった。一九七六年から二年間アジ研に出向してアメリカに派遣され、研究生活を送った。本書はその成果である。その後アジ研の理事も務められた。 この本がなぜ価値を上げてきたかというと、おそらく類書がまったく存在しないからだ。私も仕事柄探してみたことがあるが、援助政策のなりたちと政策論議をしっかりまとめた本はアメリカにもなさそうである。

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