ロシア・ウクライナ戦争は国際的な「正義」の命運も握っている[ウクライナ東部の親ロシア派支配地域が自称する「ドネツク人民共和国」幹部のデニス・プシーリン氏と会談するプーチン大統領=2025年8月4日、ロシア・モスクワ](C)EPA=時事
米大統領ドナルド・トランプ(79)が試みたロシア・ウクライナ戦争のいわゆる「停戦」交渉は、すったもんだの騒ぎを繰り広げたあげく、何の進展も見ていない。一連の過程で顕著なのは、当事者であるウクライナを十分考慮せずして物事を進めようとする米政権の大国意識である。トランプの頭の中は、米国とソ連が世界を二分して支配していた冷戦時代の思考回路から、さほど進歩していない。
ただ、冷戦時代そのままの2極構造で世界を理解しようとする傾向は、政治家に限らず、研究者や知識人にも散見される。グローバル秩序の決定権を握るのは米国やロシアだとして、ウクライナの存在を過小評価し、ウクライナ抜きにロシア・ウクライナ戦争を論じようとする姿勢は、学界や言論界にも根強いからである。
欧米対ロシアの「冷戦根性」を引きずる二元論にとらわれず、かといって欧米以外を「グローバル・サウス」と位置づけて「欧米」対「欧米以外全部」の新たな二元論を妄想することもなく、現実に即した世界観からロシア・ウクライナ戦争を見つめられないか。ウクライナ出身の政治学者カテリーナ・ピシコヴァ(Dr. Kateryna Pishchikova)はこう問いかける。そのために考慮すべきなのは、ウクライナの課題をウクライナだけのものとせず、旧共産圏諸国に共通する課題として位置づける視点だという。
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