「蓼食う虫も好き好き」というが、欧州各国のリーダーの顔ぶれを見ると、お国柄を反映して人気のある政治家のタイプがあまりにも違うことに驚かされる。その中で、何と言っても国際社会きってのお騒がせ男、シルヴィオ・ベルルスコーニ伊首相の存在は、外国人にとっては、ミステリー以外の何ものでもない。 ベルルスコーニ首相は、人気サッカーチームACミランのオーナーであり、イタリアのメディアの七割をコントロールするともいわれるメディア王で大富豪。私がミラノに住んでいた一九九四年に政界入りしたが、その時にはあまり長続きするとは思われていなかった。 あにはからんや、彼は十五年の間に三回も首相をつとめることになる。しかもその間、傘下企業の脱税容疑、贈賄容疑、不正会計でたびたび起訴され、マフィアとの黒い噂は絶えなかった。ところが、いったんは政界追放されたものの、時運に恵まれて首相に返り咲き、大統領や首相など国の要人に対する訴追、裁判を凍結する法案を可決させて、さりげなく免責の手はずを整えた。この不透明ないきさつを、欧州議会で追及したドイツ人議員に対して、「私はイタリアでナチの強制収容所の映画を撮影しているプロデューサーを知っているんですけどね、あなたを看守の役に推薦しますよ。あなたにピッタリのはまり役ですよ」と放言、EU(欧州連合)本部のある私の住む街ブリュッセルもひっくり返りそうな大騒ぎになった。

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