ベッセント財務長官の発言には、大きく分けて3つの理由が考えられる (C)EPA=時事

 

財務長官就任早々、対ドルでの円安是正に言及

「国家の権限を官僚から引き離し、官邸および閣僚のもとへと移した」――スコット・ベッセント氏が財務長官に就任する前の2022年秋、安倍晋三元首相の死去に合わせて執筆した寄稿文に、こんな一節がある。インターナショナル・エコノミー誌に掲載された10ページに及ぶこの論考は、ベッセント氏が第2次トランプ政権入りする際、有識者の間で注目を集めた。同政権で、安倍元首相の統治手法に倣うシナリオが予想されたためだ。

 こうした見方は的中し、ドナルド・トランプ氏は大統領就任後、ホワイトハウスに権力を集中させてきた。ただし、そのスタイルはトランプ氏らしく「劇場型」で、トゥルース・ソーシャルを縦横無尽に活用しながら影響力を行使し、政府効率化省(DOGE)を通じて米連邦政府職員のリストラという大鉈も振るった。閣僚たちも日々、既存・新興問わず各種メディアに登場し、Xも効果的に利用しながら、政権が推進する政策とその目的を説明。ワン・チームよろしく結束して矢継ぎ早に政策や規制の修正に乗り出し、政権の意向に沿った考えを述べている。典型的なトップ・ダウンの仕組みを整備したと言えるだろう。こうした手法は関税協議を始めとした外交でも同様で、ベトナムとの関税協議ではトランプ氏が事務方の交渉を飛び越え、相手方の確認を待たずに合意を発表する一幕もみられた。

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