トランプ政権は「飼い犬に手を噛まれる」事態に直面している[2020年に連邦検察当局が記者会見で使用したエプスタイン被告(左)とマクスウェル被告の写真=2020年7月2日](C)AFP=時事

 ドナルド・トランプ米大統領は、2019年に獄中で死亡したかつての友人、ジェフリー・エプスタイン元被告の亡霊に悩まされている。8月6日の晩、J・D・ヴァンス副大統領は副大統領公邸での夕食に、トランプ大統領以外の政権の主要幹部、スージー・ワイルズ首席補佐官、パム・ボンディ司法長官、トッド・ブランチ司法副長官、カッシュ・パテルFBI長官を招待した。CNNは、この会議の課題はエプスタインの少女買春についての捜査ファイル、いわゆる「エプスタイン・ファイル」を公開するかどうかなどの対応をめぐるものと報道されたが、出席者は一様に否定している。

 しかし構成メンバーからみれば会合の目的はあきらかだ。エプスタインの事件ファイルの開示を拒絶したトランプ政権に対して、これまでトランプを熱狂的に支持してきたMAGA(Make America Great Again)派の一部が大きな不満を持ち、開示圧力が一向に収まらないため、戦略的対応が必要だ。MAGA派は、トランプが4件の刑事訴追を受け、そのうち1件では有罪判決を受けながらも、昨年11月の大統領選挙で再選された原動力になった。もしその一部でも、エプスタイン問題をきっかけにトランプに背を向けることになれば、来年11月の中間選挙で、共和党が下院で過半数を失い、政権がレームダック化することも十分にあり得る。経済理論を無視したトランプ関税で、米国の物価は上昇を続け、景気への悪影響も懸念されるという、そもそもの逆風も吹いている。トランプ政権にとって、エプスタイン問題に幕を引いてMAGA派の支持を維持することは最優先課題だろう。

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