80周年記念大会を中国国内の視点から眺めると、全く別の姿が見えてくる[天安門広場に到着した(中央左から右へ)ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩総書記=2025年9月3日、中国・北京。写真は9月4日に北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)が公開](C)AFP=時事/KCNA VIA KNS

 9月3日の戦争勝利80周年記念大会(正式名称は「中国人民抗日戦争及び世界反ファシズム戦争勝利80周年記念大会」)は、中国にとっても今年の最大の行事であった。天安門楼上に習近平主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領及び北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の3人が初めて一緒に並び軍事パレードを眺める姿は、やはりインパクトのある映像となった。ロシアとの緊密な関係や北朝鮮との関係改善を演出したし、これにイランのマスウード・ペゼシュキアン大統領も参加したとなると、反米、反西側陣営の形成か、と一瞬ざわめく。

 この演出は、米国の動きを念頭に置いたものであることは間違いない。中露朝ともに米国と緊張関係に あり、それぞれの理由から、この3国が接近していることを示せば、トランプ政権に対する交渉ポジションは強まる。逆にトランプ式不動産交渉術の限界が見えてくる。ロシアに対する圧力のためにインドには高関税を課し中国には課さず、しかもロシアに対し全面的に軍事協力を行う北朝鮮に話し合いのシグナルを送っていたのでは、この3国に足下を見透かされてしまうだけだ。この3国はあらゆる「利益」を厳しくバーターし合う徹底したリアリズム(現実主義)外交を貫いている。「経済」に特化したトランプ式外交では歯が立たない。米国外交にあった地政学的考慮と価値観を放棄した代償でもある。

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