ウクライナが「ドネツク州からの撤退」「緩衝地帯の設置」を拒否する軍事的合理性
2025年9月17日
【図1】ドネツク州内の陣地を突破されると、ドニプロ川東岸まで防御に適した地形はほとんどない(筆者の分析をもとに編集部作成)
交渉による停戦の見込みは低い
8月15日、アラスカで開催されたドナルド・トランプ大統領とウラジミール・プーチン大統領の米露首脳会談が、ロシア・ウクライナ戦争を和平に導けなかったことは明らかである。おそらく米国に和平に向けた実効性ある調停を望むことは、もはや期待できないだろう。この8カ月間、戦争目的を全く変化させず終始一貫しているプーチン氏に対し、トランプ氏が停戦交渉のたびに譲歩を繰り返すという茶番劇が続いてきたと言えよう。
今回改めて、そしてこれまで何度も確認されてきたことは、プーチン氏の戦争目的は明確であり、それが解決されない限りこの戦争を止める気はないということである。その目的とは「根本原因の除去」、すなわち「ウクライナの中立化(NATO非加盟)」「ウクライナの非軍事化」「ウクライナの非ナチ化(民族派、親欧米派の排除)」である。このことは、セルゲイ・ラブロフ外相も、8月24日の米NBCのインタビューにおいて「どのような戦争の終結も『根本原因』の排除に向けられるべきだ」と明確に伝えている。
記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。