第4部 ヴィクトリヤの軌跡(5) ブラックホール
2025年9月28日
ヴィクトリヤとロシアに拘束されたウクライナ人ジャーナリストを象徴する棺を並べて抗議を行うNGO「国境なき記者団」[2025年2月20日、フランス・パリ](C)AFP=時事
ヴィクトリヤ・ロシナ(1996-2024)が収容されたロシア・ロストフ州管轄下の公判前拘置所「SIZO-2」、一般的に「タガンログ第2刑務所」と呼ばれる施設は、劣悪な環境と暴力的な運営で悪名高い。収容者が行方不明になることから「ブラックホール」と呼ぶメディアもある1。
刑務所は、ロシア・ウクライナ国境から50キロほどロシア側に入ったアゾフ海沿岸の街タガンログに位置している。ロシア南西部の中心都市ロストフからは70キロほどの距離である。人口約25万人で、作家アントン・チェーホフの出身地として知られる。
刑務所はもともと、19世紀初頭につくられた未成年者用の収容施設だったが、2022年のロシア軍によるウクライナ全面侵攻以後、ウクライナ兵捕虜に対する施設として使われるようになった。特に、国境を挟んでウクライナ側に位置する都市マリウポリの防御に携わった通称「アゾフ連隊」のウクライナ兵が多数収容された。
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