北朝鮮「権力継承」に兆した大変化

執筆者:平井久志2009年10月号

後継体制作りが進められてきた北朝鮮で、七月以降、幹部がこの問題を封印し始めた。一体何があったのか。「現時点で後継者問題は論議されていない」 北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長は、九月十日に共同通信との会見でそう語った。金正日総書記に次ぐ政治序列第二位の人物の発言は、北の内部で大きな変化があったことを示している。 今年に入ってから、北朝鮮は金総書記の三男・正雲氏への権力継承の地ならしを進めてきた。六月十日付の労働新聞は金総書記が党での活動を開始したときは「二十代の若さだった」と強調する政治論文を載せた。二十二日付、二十三日付にも後継問題を示唆する論評が掲載され、二十七日付では「世代が何百回代わろうと変化することがないのが白頭山の血統だ」などと「世襲」の正統性が強調された。 ところが、六月まで非常に頻繁に登場していた「後継問題」に関する論評が七月以降ぴたりと影を潜めた。 実は、金永南常任委員長と同じ発言をした人物がいた。 朝日友好親善協会の金泰鍾会長(朝鮮労働党国際部副部長)は七月十二日に、訪朝した福岡県日朝友好協会の代表団に対し、金総書記の後継者問題について「現段階では提起されていない」と述べた。党幹部が外国の友好団体との公式の場で党の明確な方針もなく後継者問題に言及できるはずはない。

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