トランプ政権が“憲法制度の擁護者”連邦最高裁に意図的に挑戦する可能性も[施政方針演説のため連邦議会に到着したトランプ大統領(左)と、挨拶を交わすロバーツ長官(右)=2025年3月4日、アメリカ・ワシントンDC](C)EPA=時事

 トランプ旋風が猛威を振るう中、政権の行き過ぎを抑制する手立てとして挙げられるのが、「マーケット(markets)」と「コート(courts)」だ。「マーケット」とは、株式市場、資本市場など、金融市場のことで、確かに政権が「解放の日」と称する今年4月2日に発表した「相互関税」を一旦停止したのは、金融市場の動揺を鎮めるためだった。

 一方、「コート」は法廷をさし、三権分立の仕組みの中で司法がチェック機能を行使することが期待されているわけだ。実際、不法移民の強制退去から関税の賦課まで、政権による攻撃的な政策の展開に対して多くの訴訟が提起されている。こうした案件の多くは今のところ下級審のレベルに留まっているが、今後連邦最高裁判所(SCOTUS)が実質的判断を下す段階に入ることが想定される。

 連邦最高裁は、20年間にわたるジョン・ロバーツ長官のリーダーシップの下、司法抑制の姿勢を強化してきたが、既存体制の打破を目指すポピュリスト政権とどう向き合うか、困難な課題に直面している。本稿では、連保最高裁を取り巻く政治状況を分析するともに、今後の展望について考察してみたい。

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