トランプの脅しがカナダに効かない新世界

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執筆者:フォーサイト編集部2025年10月26日
カナダのカーニー首相は、アメリカとの緊密な結びつきが今や弱点になりかねないとの認識を示す[ASEAN首脳会議に参加し、マレーシアのアンワル首相(右)と握手を交わすカーニー首相=2025年10月26日、マレーシア・クアラルンプール](C)EPA=時事

 ASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議のためマレーシアに到着したドナルド・トランプ米大統領は、クアラルンプール国際空港に降り立つなり陽気に踊ってみせました。歓迎式典の参加者に敬礼で応え、米国とマレーシアの国旗を持ってまたアピール。

 ASEANとの良好な関係を印象づける演出ですが、両者の間には厄介な課題が多くあります。4月に打ち出した相互関税で、ASEAN各国は軒並み高い税率を課されました。中国からの迂回輸出を止めるのが狙いとはいえ、このままでは各国経済は大きな打撃を被ります。そもそも、第1次政権時代のトランプ氏は東アジアサミット(EAS)に一度も参加しないなど、ASEANへの関心が強いとはとても言えない。それがこの地域での中国の影響力拡大に繋がったとも指摘されます。

 一方で、ASEANを含むインド太平洋と連携する国際社会の動きは強まっています。英国のCPTPP(包括的・先進的環太平洋経済連携協定)加盟に象徴される欧州だけでなく、インドネシアと湾岸協力会議(GCC)加盟国とのFTA交渉など、ASEAN側から他地域へのアプローチも注目されます。

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