米国農村がトランプを支持する“現実的動機”
2025年11月5日
農家は「富裕層」であり、ポピュリスト的アジェンダへの理解は限られている[2025年10月10日、アメリカ・メリーランド州コルドバ近郊の大豆農場](C)AFP=時事
米国の農家は、ドナルド・トランプ大統領の有力な支持層の一角を占め、2024年の大統領選挙における勝利にも大きく貢献した。しかしながら、第二次政権発足後、攻撃的な貿易政策のあおりを受け、最大の得意先である中国への農産品の輸出が大幅に落ち込むと同時に、不法移民の強制退去措置の推進に伴い、農業労働者の安定的な確保に不安が生じるなど、農業を取り巻く環境は複雑化している。
とはいえ、第一次トランプ政権においても、対中貿易の停滞により多くの農家が打撃を受けたにも拘わらず、共和党に対する政治的支持には大きな影響は生じず、トランプ大統領再選を確実なものとした。本稿においては、米国農業を取り巻く状況を分析するとともに、政権に対する農家の根強い支持の背景には、どのような要因があるのか、そして、複雑化する政策環境の中でこうした支持に変化が生じる可能性はないか、考察してみた。
第二次トランプ政権下での複合的挑戦:「対中国」だけではない不確実性
第二次トランプ政権の下で米国農業を取り巻く環境は、複合的な要因によって第一次政権当時に比べても一層複雑なものとなっている。
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