[公共テレビの生放送インタビューに出演したルコルニュと、背後のスクリーンに映し出されたマクロン=10月8日](C)AFP=時事

 政策や論理よりも野心や感情がしばしばものを言うフランス政治に、ハプニングはつきものである。その最大のものは、まだ左右が拮抗していた2002年、大統領選で最有力候補の社会党首相リオネル・ジョスパン(88)が第1回投票で敗れ、右翼「国民戦線(現「国民連合」)」創設者ジャン=マリー・ルペン(1928-2025)が決選に進出した「ルペン・ショック」だろう。ただ、2025年10月6日月曜日にあった新首相セバスティアン・ルコルニュ(39)の記者会見も、驚きの度合いではそれに匹敵する。何せ、前日の夜に組閣し、一夜明けて首相が抱負を語るかと思いきや、いきなり辞任を表明したのである。内閣の顔ぶれに納得しない閣僚が早くも辞任に動き、内閣自体が持ちこたえられないとの判断からだった。

 その内閣の寿命は、まる1日にも達しなかった。日曜日の午後7時45分から月曜午前9時41分まで、計836分間である1。フランス第5共和制ではもちろん最短だった。

 無政府の状態に陥ったフランスでは、ルコルニュに代わる新首相を巡って、様々な憶測が飛び交った。自分にお鉢が回ってくると意気込んだ人もいたようだが、4日後に指名されたのは、またもやルコルニュだった。2026年度予算を通す使命を帯びた彼は、実務者を中心とする第2次内閣を発足させ、国民議会(下院)で突きつけられた不信任案を辛くも乗り切ったものの、前途は多難である。大統領エマニュエル・マクロン(47)への左右双方からの攻撃も、ますます激しい、一方、政界では今回の危機を通じて、2027年次期大統領選の有力候補だった政治家らの評価が大きく変化し、マクロン後のフランスの行方はますます不透明になってきた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。