オバマケア補助金延長に対する共和党下院の方針は不透明だ[つなぎ予算法案に署名するトランプ大統領を見守る下院共和トップのジョンソン下院議長=2025年11月12日](C)EPA=時事

 

つなぎ予算可決に“貢献”した民主党の8人

 米議会の予算交渉は、しばしば「kabuki theater」と形容される。「kabuki」は日本の「歌舞伎」だ。期限直前には妥協が成立する“お約束”の展開を歌舞伎の様式美になぞらえるのもどうかと思うが、党派間の駆け引きや対立は実のところ有権者へ向けた演出に過ぎないという皮肉が込められている。

 だが、2025年秋に幕開きしたつなぎ予算協議は期限内に合意に至らず、政府機関は閉鎖に追い込まれた。ドナルド・トランプ大統領が上下院で可決したつなぎ予算法案に署名したのは、11月12日。閉鎖期間は実に43日に及び、2018年12月22日から2019年1月25日まで続いた35日間を塗り替え、史上最長を記録した。

 つなぎ予算は下院共和党の単純過半数で9月19日に可決した後、上院での交渉が難航し政府機関閉鎖に陥った。障害となったのは、上院でのフィリバスター(議事妨害)だ。フィリバスター阻止には5分の3以上、つまり60票の賛成が必要となる。上院100議席のうち共和党は53議席を占めるが、同党のランド・ポール議員が、つなぎ予算法案に盛り込まれた向精神性のあるヘンプ(麻)製品の取り締まり強化に、地元ケンタッキー州のヘンプ産業を代表し反対を表明。共和党は民主党から8人の賛成を取り付ける必要があった。しかし、民主党はコロナ禍に導入され、2025年末に期限切れを迎える医療保険制度改革法(ACA、通称オバマケア)の補助金の延長を掲げて譲歩せず。11月4日のニュージャージー州とバージニア州の知事選、ニューヨーク市長選、カリフォルニア州の住民投票で全勝するのを待った後、中道派の8人が漸く造反し、上院でのつなぎ予算可決に貢献した【チャート1】。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。