熱狂は去り「シェアよりも着実な利益」が重要に[2025年11月11日、中国・北京](C)AFP=時事
中国で毎年11月11日をピークに行われるECイベント「ダブルイレブン」(双十一)は、世界最大のネットセールと言われる。日本では「独身の日」として知られるこのイベントだが、かつての熱狂を失っている。不景気が原因というより、中国経済の構造転換のサインとして理解するべきだろう。
ダブルイレブン(11.11)とは2009年に中国EC最大手アリババグループが始めたセールだ。数字の「1」を枝のない棒に見立て、恋人がいない独身者がパーティーを開く「光棍節」という民間発のイベントに乗っかり、寂しさをお得な買い物でまぎらわす日となった。他のECサイトや小売店も追随し、中国最大のセールとなった。2025年のダブルイレブンのGMV(総流通額)は、前年比14.2%増の1兆6950億元(約37兆円)。楽天のGMVが年間約6兆円、その6年分以上を1回のセールで売り上げているわけだ。
いったい、なぜこれほどの規模へと成長したのか。その根底にあるのは中国消費がひたすらにパイを拡大する「増量経済」だったためである。以前、ある日本の医薬品メーカーにダブルイレブン参加の理由を訪ねると、「顧客を増やすチャンスだから」が答えだった。セールになると、消費者は血眼になってお得な商品を探すようになる。「今年のダブルイレブン、ベストバイ10選」「この組み合わせが一番お得」といった買い物指南も出回る。この熱気に煽られ、新たな顧客とめぐりあうことができるのだ。
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