株式市場は「冷夏」にどう反応したか

執筆者:鷲尾香一2009年10月号

 今夏、株式相場で値動きが際立ったのは「冷夏銘柄」だった。長期天気予報で長梅雨が予想され、その後、エルニーニョにより日照時間が異常に短い「冷夏」が予測されると、株式市場で関連銘柄がさかんに買われた。 まず予想されたのはコメの不作である。倉庫業で米卸を営むヤマタネ株は、八月初旬から連日、今年の最高値を更新した。コメの不作が必ずしも米卸の好収益に結びつくとは限らないが、「大冷夏」に見舞われた一九九三年に米価が高騰したとき、連想でヤマタネ株が急騰。今回ヤマタネ株を上昇させたのは、こうした経験則だった。 長雨と日照不足の影響から野菜の不作を予想し、そこから連想買いに走る動きもあらわれた。高値の野菜を買い控えつつ、野菜不足を補うため、すぐには商品価格を引き上げない野菜ジュースの購入額が増えるだろう。そうした思惑から、七月中旬以降、カゴメ株が上昇。ジャガイモ、トマト、ニンジンといった野菜の価格が昨年の同時期より二―四割も上昇していると報じられたのは八月初旬になってからだが、すでにひと相場終えたカゴメ株に大きな値動きはなかった。これを相場用語で「材料を織り込んだ」と言う。 日本列島の中でも、東北地方の梅雨は長引いた。長雨は、稲の病気の中で最も被害が大きい「いもち病」の発生原因になる。農林水産省が冷害対策の連絡対策会議を設置した八月初旬、明治ホールディングスや日本農薬、日産化学工業、日本曹達など農薬株が続伸した。

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