ハセットNEC委員長(中央)は「成長が急加速し、生産性が急上昇する局面で、不法移民の国外退去により労働力人口が減少中」と説明 (C)AFP=時事

 

“低採用・低解雇”のAIブーム

 人工知能(AI)ブームは、しばしば IT バブル期との類似性が指摘される。AI 大手オープンAIと半導体大手エヌビディアの循環取引に象徴されるように、資金が特定企業に集中し、期待先行でバリュエーションが膨張する構図は確かに当時を想起させる。

 もっとも、決定的な相違点もある。IT バブル期は失業率が 4%を割り込むなど労働市場が過熱していたのに対し、足元のAIブームは景気拡大にもかかわらず雇用の伸びが鈍い。2025年第3四半期の米実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率4.4%と高水準だったが、労働市場は“低採用・低解雇(Low Hire, Low Fire)”の停滞色を帯びている。

 その背景には、①コロナ禍後の景気回復一巡、②トランプ政権の関税政策による不確実性、③不法移民取り締まり強化に伴う労働供給の減少――などの要因が挙げられる。しかし、より構造的には、生成AIを含む自動化技術の急速な普及が大きい。企業は生産性向上を優先し、採用を抑制しつつ業務効率化を進めており、労働需要の伸びは明らかに鈍化している。ゴールドマン・サックスのエコノミストは、こうした状況を「雇用なき成長(ジョブレス・グロース)」と指摘した上で、「控えめな雇用増と力強い GDP 成長の併存」は、今後数年にわたり“ニューノーマル”になると予想。成長の大部分はAI利用の進展が押し上げる堅調な生産性の伸びによってもたらされる一方、労働供給の増加は人口高齢化や移民の減少により、あくまで小幅にとどまると見込む。

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