「教育無償化」の罠――「私学の公立化」と「公立校の統廃合」狭まる選択肢
2026年3月26日
教育無償化がもたらすインパクトは、私立学校だけの問題にとどまらない (C)AiPhoto/stock.adobe.com
日本の家計において、長きにわたり重い負担となってきたのが教育費である。義務教育終了後の高等学校、とりわけ私立高等学校への進学は、家庭の経済状況に大きく左右される現実があった。これまでも国や自治体により多様な負担軽減策は講じられてきたが、令和8年度から「教育無償化」の名の下に所得制限を撤廃した全国的な支援が開始される。
この施策は家計の教育費負担を下げ、少子化対策にも寄与する福音であるように思われる。しかし、その内実を市場原理や学校経営という観点に照らし合わせると、中長期的には日本の学校教育から多様性を奪い、教育の質そのものの低下をもたらしてしまう負の側面も見え隠れする。本稿では、この新たな無償化政策が、学校教育にとって真に「良いこと」となるのか考察したい。
「支援額内に収まる」品質の授業だけに?
まず、令和8年度から始動する新たな無償化制度の特徴を整理する。これまでも、年収約910万円未満の世帯を対象とした就学支援金の支給など、様々な形での支援策は存在した。しかし、今回の施策の最大の特徴は「所得制限の撤廃」にある。「三党合意に基づくいわゆる教育無償化に向けた対応について1」という資料が示すように、この制度は実質的な「高校授業料の無償化」を意図している。具体的には、私立高等学校(全日制)の場合は全国一律で授業料の年間45万7200円を上限として国が支援するというものである。入学金や施設費等は対象外だが、学納金の多くを占める授業料が実質ゼロになるインパクトは大きい。
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