中央アジアの資源を巡る三つ巴の争奪戦

執筆者:大木俊治2009年10月号

パイプライン建設を巡るロシアとEUの争いに、中国も参戦。域内諸国は、輸出先の多様化を歓迎しているが……。[モスクワ発]カスピ海沿岸のアゼルバイジャンやカザフスタンなどの中央アジア諸国は、豊富な天然資源を有することで知られる。これまでそれらの資源は、ほぼ「旧宗主国」ロシアを経由するルートで他国に輸出されてきた。しかし今年、東では中国向け直通パイプラインが完成し、西ではロシアの独占打破を狙う欧州連合(EU)の構想が動き出す。中央アジアの資源を巡る争奪戦が始まった――。     * 七月十三日、天然ガスをカスピ海沿岸からロシアを迂回して欧州へ運び出すEU主導の輸送計画「ナブッコ・パイプライン」の建設協定が結ばれた。着工は二〇一一年の予定だ。計画に参加するのは、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリアの五カ国。EUのバローゾ欧州委員長も「エネルギー安全保障の強化に向けた最も重要な事業」と位置付ける。だが、欧州向けガス供給の独占を維持したいロシアの警戒感は強く、EUの思惑通りには進みそうもない。 ロシアは、「ナブッコ」に対抗して来年の着工を目指す「サウス・ストリーム」計画を推進している。八月六日には、プーチン首相がアンカラでトルコのエルドアン首相と会談し、「サウス」計画のトルコ領海通過で合意を取り付けた。

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