[ワシントン発]十月の初めからワシントンDCに来ている。二カ月半ほど、ウッドロー・ウィルソン国際学術センターに客員研究員として滞在する。米連邦議会議事堂のすぐ裏の、キャピトル・ヒル地区に部屋を借りた。窓からは議会図書館の本館「ジェファーソン館」のドームが見える。 ワシントンDCに集中する政策シンクタンクや大学の研究所で交わされる中東をめぐる議論に参加しつつ、議会図書館の中東関係資料をじっくり活用してみようというのが今回の滞在の一つの目的である。 受け入れ先のウィルソン・センターに提出した研究テーマは「オバマ政権の対中東政策」である。 これは「研究」のテーマとしてはまだ熟していない。オバマ政権は発足直後から活発に中東政策をめぐる「理念」を打ち出してきたが、具体的な「政策」が出揃っているわけでもなく、ましてやその成果が出るのはもっと先になる。むしろ、ワシントンで政策が形成されていく過程の議論を身近に見聞きしておくのが最大の目的である。外交の焦点は「アフパク問題」 ワシントンに到着早々、オバマの中東政策をめぐる議論が活発に交わされる機会に立ち会えた。米時間で十月九日早朝に発表された、オバマへのノーベル平和賞授与である。まさに寝耳に水で、同僚の研究員たちとも話が弾んだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。