五月にロシアのプーチン首相が来日した際、日露関係の将来を担う絆として鳴り物入りで締結された日露原子力協定の発効が宙に浮いている。 この協定は、ロシアへのウラン濃縮委託や原発技術輸出などに道を開くもので、東芝は協定締結を受けて、ロシアのウラン燃料会社テクスナブエクスポート社と濃縮工場建設などを想定した協力覚書に調印。中部電力も同社と二〇二二年まで低濃縮ウランを長期購入する契約を結ぶなど、両国の業界はにわかに活気づいていた。 ところが、原子力協定に規定されている国際原子力機関(IAEA)による査察をめぐり、ロシア側の受け入れ準備が大幅に遅れている。ロシアは東シベリアのアンガルスクの濃縮施設で査察を受け入れる予定だが、核物質の計量管理や監視カメラ、査察要員の養成が、経済危機や見通しの甘さから進んでいない。 被爆国である日本政府は、核物質の軍事転用を防ぐために、ロシアの施設に査察受け入れ態勢が整わなければ、協定を批准にかけない方針を明らかにしている。協定発効を睨んで見切り発車した日本の業界には手痛い誤算となりそうだ。

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