民主党の「農協潰し」が加速する

執筆者:一ノ口晴人2009年11月号

自民党にも農水省にも見捨てられた農協(JA)。だが、来夏の参院選を見据える小沢氏は容赦しないだろう。 鳩山内閣の発足から一夜が明けた九月十七日の朝、全国農業協同組合中央会(全中)や全国農業協同組合連合会(全農)などJAグループの中枢幹部数人が、新政権との対応について協議した。全中の冨士重夫専務理事ら参加した面々はそろって棒を飲んだように押し黙り、暗い表情だったという。 無理もない。先の総選挙で、JAグループの政治団体である全国農業者農政運動組織連盟(全国農政連)の推薦候補二百八十一人のうち、当選したのは百十二人。当選率は四割に満たない。一九九三年までの中選挙区時代は「農政連が推薦した時点で当選確実」と言われるほどの集票力があり、候補者の間で推薦獲得競争が繰り広げられていたものだ。 それも今は昔。今回の総選挙では自民党農林族の落選が相次ぎ、大臣や副大臣、農林部会長経験者など農林族幹部は壊滅状態となった。なかでも長野、静岡、滋賀、沖縄県は、まさかの「全敗」。いずれも農業の盛んな地域であり、長野県は全中の茂木守会長のお膝元でもある。 鳩山政権の農林水産相には農政そのものと縁が薄い赤松広隆・民主党選挙対策委員長(当時)が起用された。十七日未明の就任記者会見では「農業者戸別所得補償制度は二〇一一年度から実施する。そのためには一〇年度から制度を設計する」「もちろん減反政策は見直す。農家はより効率的な在り方に変わらなければならない」と言い切った。

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