林業の「産業化」で日本の森を守れ

執筆者:梶山恵司2009年11月号

世界有数の森林資源が、宝の持ち腐れどころか崩壊の危機に。再生のために残された時間は少ない。 これまで日本の林業は「産業」として成り立っていなかった。いや、官民とも「産業」にする気がなかったと言うべきか。林業は治山治水や山間地の雇用対策とほぼ同義であり、それゆえ補助金や公共事業があてがわれ、それでよしとされた。 それでも森林が健全に保たれていればよかったのだろうが、現状は違った。世界で最も恵まれた日本の森林資源は、いま崩壊の危機に瀕している。各地で増え続けているのはひょろひょろした木ばかりが生えた森林だ。手入れ不足のため樹木が密生し、日光が地面まで届かないことによる現象である。森林を再生させる唯一の道は、林業を「産業」として確立することだ。ドイツ林業は成長産業 日本が参考にすべきは、ドイツの「森林経営」である。 ドイツの森林面積は一千万ヘクタール。日本の森林面積の四割にすぎないが、そこから生産される木材はおよそ七千五百万立方メートルと日本の四倍近くに達する。この生産量をベースに、製材や木材加工、流通など裾野が広い産業群を形成。ドイツ林業は輸出産業となるほど競争力も強く、そこでの雇用は百万人と、自動車産業の七十万人をしのいで国内最大である。

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