伊軍六人死亡「泥沼化」止まらぬアフガン情勢

執筆者:栗田慎一2009年11月号

[カブール発]九月十七日正午前、アフガニスタンの首都カブールの幹線道路を自動車で通行中、パンという甲高い爆音の直後に窓ガラスが風圧で軋み、車体が横揺れした。「自爆攻撃だ」。運転手が指差した一キロ先の上空に、土色のきのこ雲があった。 現場に向かう道沿いのビルや建物の窓ガラスは全て割れていた。血まみれの負傷者を荷台に乗せた猛スピードのトラック数台とすれ違った。 現場では、上空に向かって銃が乱射されていた。事件後に集まった治安要員を狙う二度目の自爆を警戒する威嚇発砲だ。何かが焼けるにおいに視線を落とすと、ちぎれた手足、ヘルメットを被ったままの頭部、部位不明の肉塊が転がっていた。燃え上がる軍用車両の後部座席に兵士が二人、保護ベルトに固定されたまま炎にあぶられていた。 国際治安支援部隊(ISAF)を狙った、旧支配勢力タリバンによる自爆攻撃だった。ISAFは四十一カ国が参加し、国ごとに全国三十四州のいずれかの治安維持を担っている。カブールはイタリア軍の担当となっており、死者十六人のうちイタリア兵六人、通行中に巻き込まれた市民が十人だった。 アフガニスタンでは七月以降、ほぼ毎日、自爆や路上の仕掛け爆弾による攻撃が起き、外国兵の死者は最悪のペースで増え続けている。イタリア国内では今回の攻撃後、「アフガニスタン戦争は失敗した」という総括が説得力を持って報じられ始めた。タリバンの最大標的となっている米軍も、十月三日に東部ヌリスタン州で米兵八人が死亡した後、同州に展開する小規模部隊の撤退に動き出しているという。タリバンの脅威を米軍が認めた初の出来事で、マクリスタル駐留米軍司令官が八月下旬にオバマ米大統領の安全保障チームに提出した報告書で、増派しなければ八年間の戦争が「失敗に終わる」と訴えた内容に現実味を持たせた。

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