九月二十七日のドイツの総選挙でメルケル率いる保守政党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と中道右派の自由民主党(FDP)が勝利し、これまでの社会民主党との大連立政権に代わって中道右派政権がドイツを担うことになった。ただ、中道左派の社民党が脱落したからといって「小さな政府」「親米」に向けてドイツが急転換するわけではなさそうだ。「働いたらもっと報われる社会にしよう」。こんなポスターをFDPは選挙期間中、街のあちこちに張り出した。賃金は高くても税金と社会保険料が差し引かれると手元にはそれほど残らない。そんな意識を持つ有権者の歓心を買う戦略があたり、過去最高の得票率で十一年ぶりに与党に復帰する。一見すると「小さな政府」志向のように見えるが、一方で「欧州型資本主義は守る」と明言。行き過ぎた高負担の是正は主張しても、「高福祉」を根本的に否定することはなかった。「親米」になるというのも幻想にすぎない。二〇〇五年のメルケル首相就任時にも日本メディアは「ドイツが親米路線に転換」と書きたてたが、実際には温暖化対策や金融規制で対立した。今回はオバマ政権の誕生で風向きが変わり独米関係の改善機運はあるが、それは大連立政権が続いたとしても同じだ。

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