「近代化」を見せつけた中国軍の“外剛内弱”

執筆者:藤田洋毅2009年11月号

莫大な軍事予算を注ぎ込み“強兵”をはかる中国。しかし、「人民の軍」が内包する矛盾は“二十年一日”のごとし――。 中国人民解放軍は「人民の軍隊」ではなく「共産党の私兵」に過ぎないことを、中国の人々が改めて痛感したのが一九八九年六月の天安門事件だった。民衆と距離の離れた軍隊ほど「人民」の名を冠したがるのは、北朝鮮の朝鮮人民軍も然りだ。 その天安門事件から二十年。この間、中国の軍事費は公表分だけでも二十二倍に拡大し、装備の近代化も猛烈なスピードで進んだが、「非人民軍」的な性格に、根本的な変化はない。中国共産党内の世代交代、権力の変遷に沿って、「軍権」の掌握者が代わり、軍内の構造が微妙に変化しているに過ぎない。 いま、「軍権」は、胡錦濤総書記(党中央軍事委員会主席・国家主席)の手にある。その後継者の最有力候補は習近平国家副主席だが、習が「順当に」党中央軍事委の筆頭副主席ポストに就くとともに、李継耐軍総政治部主任が同委副主席に昇格、張海陽成都軍区政治委員が李の後任となる人事が「すでに内々定し、早ければ年内にも正式決定されるだろう。当面、李・張の動きから目が離せない」と、軍の複数の幹部が語った。中国の権力の核心は「軍権」であり、そのありようを端的に示すのが党中央軍事委の人事。「軍権」の引き継ぎ作業が着々と進んでいるのだ。

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