「急がない米国」に焦る北朝鮮の「次の手」

執筆者:平井久志2009年12月号

どんなに気を惹いても米国は振りむいてくれない。それでも北は二国間協議にしか活路を見出せない。 クローリー米国務次官補は十一月十日、ボズワース北朝鮮担当特別代表を年内に平壌に派遣することを決め、北側に伝えたことを明らかにした。米政府高官の訪朝は昨年十月にヒル国務次官補(当時)が訪朝して以来。ボズワース代表は平壌で姜錫柱第一外務次官らと協議することになる見通しだが、双方の立場の違いは大きく、核問題はせめぎあいながら年を越す可能性が高い。     *「米国がまだわれわれと向き合う準備ができていないなら、われわれもそれだけ自らの道を行けばよいことであろう」 北朝鮮の李根外務省米州局長は十月二十三日から十一月二日まで米国を訪問した。二十年近く対米交渉に関わってきたキーパースンであり、北の六カ国協議復帰への道筋を付けるものと期待が高まったが、十一月二日の北の外務省声明は突き放した表現で終わった。米国務省高官も同日、「(米朝間に)信頼の欠如がある」と述べた。李局長の訪米の最大の成果は、信頼関係の再構築が必要だと確認したことかもしれない。 翌三日、北朝鮮は、使用済み核燃料棒八千本の再処理を八月末までに終了し、「抽出されたプルトニウムを朝鮮の核抑止力強化のために武器化することにおいて注目すべき成果を挙げた」と強調した。しかし、その内容は、北が九月初めに国連安全保障理事会議長に対して通告した「使用済み核燃料棒の再処理も最終段階にあり、抽出されたプルトニウムが武器化されている」との内容と大差なく、「自らの道」を改めて米国に示すことで米朝協議を実現させようとする圧迫戦術だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。