「アイ・ミーブ」の広告塔 益子修の凄み

執筆者:杜耕次2009年12月号

二度にわたるリコールなどで経営危機に瀕した三菱自動車の再建に邁進。その足どりは、クライスラーをいったんは立て直したアイアコッカに似るが……。「そこの車。ここに入っちゃ駄目ですよ」 三菱自動車社長、益子修(六〇)はつい最近まで、取引先やホテルに赴いた際に車寄せや駐車場で警備員から注意されることが何度かあった。 益子の社用車は同社が誇る「世界初」の量産型電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」。軽自動車サイズでおまけに赤と白の派手なボディカラーだ。従業員一万人を超える大企業のトップの車には見えない。運転手が小声で「社長です、社長です」と懸命に説明している姿を三菱系企業幹部や報道関係者など少なからぬ人が目撃している。「運転手さんには悪かったなあ」。益子は訪問先で恥をかこうと、狭い車内で窮屈な思いをしようと意に介さない。自ら“広告塔”になり、虎の子の戦略車を売り込もうと、並々ならぬ決意で臨んでいるからだ。 そんな益子の肩身の狭さが緩和されつつある。今年六月から同社は水島工場(岡山県倉敷市)でアイ・ミーブの量産を開始、七月には全国の電力会社や自治体に一斉に納車した。二〇〇九年度販売計画千四百台(法人、自治体向け限定)はすでに完売し、個人向け販売が始まる一〇年度計画五千台のうち、十月末現在で千五百台の受注を獲得している。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。