このままでは自滅する日本漁業の無策

執筆者:井田徹治2009年12月号

「早い者勝ち」で大量に捕るから魚価が値崩れし、資源の減少が競争を激化させる。悪循環を断つには構造改革しかないのだが……。 高級トロの材料として日本で大量に消費される大西洋のクロマグロ。その国際貿易を、絶滅の恐れがある野生生物に関するワシントン条約で禁止しようとの声が高まっている。来年三月の締約国会議に向けてモナコが提案、日本政府は反対する姿勢だが、米国が提案を支持する姿勢を表明し、会議の結果が注目される。 クロマグロだけではない。一部の研究者に異論はあるものの、国際自然保護連合(IUCN)はクロマグロに次ぐ高級品のミナミマグロを「絶滅の恐れが極めて高い」としているし、価格が安い「普及品」のメバチマグロも絶滅危惧種リストに加えている。 日本が世界最大の消費国になっている刺身用マグロをめぐる昨今の情勢は、世界の漁業が置かれている厳しい状況の象徴だ。今や、世界中の多くの漁師が先を争って、どんどん少なくなる魚を追い掛けている。「資源減少時代」を迎え、世界ではさまざまな取り組みが始まっているが、日本の水産行政はそれらの流れから完全に置き去りにされている。一部の業界と行政(水産庁)とのもたれあいの構造のため、業界の体質改革にも、資源の適切な管理にも失敗してきたことが最大の原因だ。

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