「孤島化」回避を狙う広州―香港高速鉄道

執筆者:八ツ井琢磨2009年12月号

 中国華南地域の中心都市である広州(広東省)と香港を結ぶ全長百四十キロの「広州・深セン・香港高速鉄道」の建設が近く正式に始動する。香港政府は十月半ば、この鉄道の香港区間(二十六キロ)の建設計画を決定し、年末に着工する方針を発表した。二〇一五年に予定される全線開通後は、在来線で二時間かかる広州―香港間の所要時間が五十分に縮まる。 建設をめぐっては、採算性の観点から否定的な見方も根強かった。事実、計画によれば、香港区間の総工費は六百五十億香港ドル(約七千五百億円)と二年前の見積りより六割膨張。一方、運営開始後五十年間の総収入は二百八十億香港ドルと推計され、工費の半分すらカバーできない計算となる。 にもかかわらず建設に踏み切るのは、この鉄道が中国を覆う高速鉄道網に組み込まれる予定で、仮に建設しなければ「香港は孤島状態」(香港政府運輸担当閣僚)となり、中国の経済成長から取り残されるとの危機感があるためだ。 中国政府は二〇二〇年までに総延長一万六千キロの高速鉄道を整備する計画。年末には中部の工業都市である武漢(湖北省)と広州をつなぐ全長千キロの高速鉄道が開通する。広州―香港間の全線開通後は、北京や上海など十六都市と香港を結ぶ直通列車の運行も予定されている。

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