仕分けを免れた「外国人受け入れ利権」

執筆者:出井康博2010年1月号

 政府の行政刷新会議による「事業仕分け」が大詰めを迎えていた十一月二十六日午後――。厚生労働省傘下の社団法人「国際厚生事業団(JICWELS)」が東京・渋谷で開いたインドネシアとフィリピンからの介護士・看護師の受け入れ説明会には、約百五十人の介護施設、病院関係者が集っていた。その席上、JICWELSの角田隆・専務理事は誇らし気に言った。「(外国人介護士らへの受け入れ支援事業は)幸い、事業仕分けの対象にはなっていない。是非とも予算を確保したいと思います」 二〇一〇年度予算の仕分け対象となった事業は四百四十九。その多くが廃止や予算削減を求められたが、外国人介護士らの支援事業は仕分けから漏れていた。 同事業に対し、厚労省が一〇年度要求する予算は八億七千四百万円。〇八年度の六千九百万円、〇九年度の八千三百万円と比べ十倍を超える額である。その予算は全額がJICWELSに回される。介護士らの施設への斡旋業務を独占するJICWELSは、歴代理事長を旧厚生省の事務次官経験者が務めてきた天下り機関であり、前出の角田専務理事も元厚労省官僚だ。 外国人介護士らの受け入れには、他にも経済産業省が十九億六千万円(〇九年度は十六億二千万円)の予算を求めている。厚労省予算と合わせれば、〇九年度より十億円以上も多い約二十八億円に上る。主な使い道は、介護士らに対する日本語教育だ。経産省と外務省(一〇年度は予算要求なし)が就労前の半年間の研修、厚労省が就労後の支援を担う。一〇年度にインドネシアとフィリピンから受け入れられる介護士・看護師は最大で千百四十人。一人当たりに直せば、約二百五十万円の税金が使われる計算である。

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