保育所の設置基準緩和が生み出すメリット

執筆者:渥美由喜2010年1月号

 保育所の「最低基準」を巡って議論が錯綜している。そもそも保育所には、一定の質を確保するため一九四八年に施行された「児童福祉法」に基づき、室内の面積のほか、保育士の人数配置などの基準が示されている。この最低基準を満たし、都道府県が認可しているのが認可保育所だ。二〇〇九年十月に政府の地方分権改革推進委員会は、国による認可保育所の設置基準などの見直しを求める勧告を出した。これを受けて、厚生労働省は東京都など待機児童が多い都市部を中心に、待機児童が解消されるまで、一時的に保育所の設置基準を緩和する方針だ。 こうした一連の動きに対して、保育士、一部の保護者や研究者を中心に、「保育の質」の低下を懸念する声が挙がっている。筆者も保育所に子どもを預けている親の一人として、安全・安心な保育環境を最優先すべきという点に異論はない。しかし、対案のない批判だけを繰り返していても、決して生産的な議論とはならない。以下、三つの視点から考えてみたい。 第一に、地方分権の観点だ。少子化対策、子育て支援策を検討する際に、最も大切なのは皮膚感覚だ。地方自治体の担当者の方が、厚労省の担当者より地域実情に応じたきめ細やかな施策を展開できる。地価が高い都市部では保育所の用地確保が難しく、保育所の新設がなかなか進まない状況を国が解決できていないからこそ、東京都独自の制度の下、「認証保育所」などが出てきた。

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