電子機器受託製造(EMS)世界最大手の台湾企業、鴻海グループが二〇〇九年十一月中旬、台湾の液晶パネル大手、奇美電子の買収を発表した。同社は台湾の二大パネルメーカーの一角で、日本企業にも液晶パネルを供給している。鴻海はこれに先立つ十月、パソコン(PC)などの受託製造を手掛ける金仁宝グループ傘下のパネルメーカー、統宝光電の買収も発表。矢継ぎ早の買収劇からはさらなる規模拡大を図る鴻海の野望が透けて見える。 鴻海が米アップルの「iPod」をはじめ、任天堂の「Wii」やソニーの「プレイステーション」シリーズといった名だたるヒット商品を受託生産していることは、知る人ぞ知る事実。米ヒューレット・パッカード(HP)やデルも主要顧客で、鴻海なくして世界のデジタル家電産業は立ち行かないと言っても過言ではない。 一九七四年にテレビのスイッチメーカーとして台北郊外に創業した鴻海は、八〇年代に入ってPC用のコネクターを手掛けるなどして事業を拡大。デジタル時代の到来で九〇年代からPCなどのEMS事業が急成長し、その後は携帯電話やゲーム機の製造に乗り出して今日の「EMS王国」を築いた。 鴻海を世界一のEMS企業に育てたのが、今もグループトップに君臨する創業者の郭台銘氏(五九)。台湾ではカリスマ経営者として超有名で、プライベートも含めた一挙手一投足はマスコミの注目の的だ。

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