ゆうちょ銀行「財投化」の悪だくみ

執筆者:本田真澄2010年1月号

貯金残高百八十兆円の「巨大なサイフ」を手に入れた財務省。これを「第二の予算」として大盤振る舞いするためのカラクリとは。「これで郵政を取り込めたな」 斎藤次郎氏の日本郵政社長就任が決まった十月下旬、勝栄二郎主計局長を中心とした財務省の中枢は沸いていた。彼らにとって、日本郵政は「巨大なサイフ」だ。傘下のゆうちょ銀行の貯金残高は約百八十兆円。超低金利が続き目減りしたとはいえ、今なおメガバンクを凌ぐ巨額資金を再び自分たちの裁量で使える――彼らの思考は、早くもその「使途」に飛んでいた。 すこし解説が必要だろう。 二〇〇〇年度まで郵便貯金で集めた資金は大蔵省(当時)に運用を預託することが義務付けられていた。大蔵省はその資金を国債購入か財政投融資で“運用”。財投は特殊法人や政府系金融機関に融資するもので、「民間でできない大型プロジェクトに長期固定の安定資金を供給する」との名目の下、郵便貯金は道路建設などに幅広く使われた。「第二の予算」とも呼ばれる財投は、大蔵省が政界や産業界に行使する影響力の源泉にもなっていた。 運用を任された大蔵省には利子をつけて返済する義務がある。だが、杜撰な経営をしていた特殊法人などからの返済は滞り、損失分は実質的に税金で補填されてきた。

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