世界の石炭の生産と消費でそれぞれ四割を占める中国が、二〇〇九年に通年で初めて石炭の輸入量が輸出量を上回る純輸入国に転じる。〇九年一―九月期の石炭輸入量が前年同期比で約二・七倍の八千六百万トンを超える一方で、輸出量は前年同期比で五〇%超も減少し、千七百万トンに届かなかった。 主な要因は、中国の経済発展だ。特に石炭を大量に使用する粗鋼の生産が増え続けていることが大きい。これまでは自国内で使用する石炭は自国産に頼ってきたが、すでに輸入に頼らざるを得ない状況になっている。 加えて、中国政府は炭鉱操業の安全規制の強化に乗り出した。国内には中小の炭鉱が多いが、それらは安全性が確保されておらず、落盤事故などが頻発しているためだ。安全基準を満たさない炭鉱は操業停止となるため、国内産の石炭生産は減少すると予測されている。 中国のエネルギー消費量の約七割を石炭が占めており、中国政府は今年から新たに石炭を国家戦略備蓄の対象とする。このため、中国は石炭の輸入量をこれまで以上に増やす可能性が大きい。「黒いダイヤ」と呼ばれる石炭の国際価格は、中国の旺盛な需要を背景に上昇が見込まれており、中国は今後、高価格の石炭を輸入しなければならない状況に追い込まれている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。