邦銀を痛めつける「第二の金融敗戦」

執筆者:本田真澄2010年2月号

 これは「第二の金融敗戦」と呼ぶべき事態だ。 昨年十二月十七日、日米欧などの金融監督当局でつくるバーゼル銀行監督委員会は、銀行の自己資本への規制強化案を公表した。銀行の自己資本比率に対する国際的な規制が導入されたのは一九八七年。発端は米銀行危機だったにもかかわらず、日本の大手都銀は海外での投融資を縮小させられるなど煮え湯を飲まされた。「第一の敗戦」である。そして今回も構図は同じ。米国から世界に広がった金融危機の再発防止を名目とした規制強化で最も不利を被るのは、やはり日本のメガバンクなのだ。 本筋から言えば、規制を強化すべき対象は、混乱を世界に広げた高レバレッジのデリバティブ(金融派生商品)取引や不透明な証券化ビジネスのはずだ。しかし、国際金融市場における自国行の優位を守りたい欧米当局は消極的で、「代わりに欧米銀が(リスク資産が相対的に少ないことや公的資金注入によるかさ上げで)高い水準にある『正味の自己資本』という概念をひねりだし、新規制案の柱にした」(メガバンク幹部)。 正味の自己資本は「コア資本」とも呼ばれる。銀行の自己資本を(損失を出した際の吸収力が高い)普通株と内部留保に限って算出する概念で、これまでは自己資本に算入できた優先株や生命・損害保険との持ち合い株式などは除外される。

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