ピークアウトが近づく中国経済

執筆者:高村悟2010年2月号

驚異的な成長を続けてきた中国だが、それは自立的で持続可能なものではない。その内実を今こそ見つめ直すべきだ。 世界経済における中国の重みはこの十年で驚くほど増した。二〇〇八年の中国の国内総生産(GDP)は世界全体の七・三%を占め、米国、日本に次ぐ三位。一九九〇年の一・七%、二〇〇〇年の三・八%から急拡大した。一〇年には一〇%に迫り、日本を抜き二位に浮上する可能性が高まっている。これが頻繁に語られる中国経済に関する“常識”だ。 だが、そんな中国にトヨタ自動車やパナソニック、キヤノン、三菱重工業、三菱商事、或いは韓国のサムスン電子、現代自動車のような企業が存在するだろうか。 確かに巨大企業はある。中国石油化工集団(Sinopec)、中国石油天然ガス集団公司(CNPC)、中国国家電力網、中国移動通信、中国建設銀行など米フォーチュン誌の世界五百社にランキングされる企業は三十七社にのぼり、国別では米、日、仏、独に続く五位だ。ただ、そのうちハチソン・ワンポアなど香港企業を除けばほとんどが国有企業であり、石油、電力、通信、銀行、海運、食糧など国家独占の規制業種が中国のビッグビジネスの実態だ。純粋の民間企業で世界に羽ばたいた企業は皆無に近い。

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