上海の台頭に危機感 国際化進める香港証取

執筆者:八ツ井琢磨2010年2月号

 香港証券取引所で外国企業の新規株式公開(IPO)が増え始めている。二〇〇九年秋に米カジノ大手ラスベガス・サンズとウィン・リゾーツがそれぞれマカオ事業会社を上場させたほか、一〇年一月にはアルミ世界最大手のロシアのUCルサールが最大二百億香港ドル(約二千四百億円)を調達するIPOを実施。香港証取が進める国際化戦略が実を結びつつある。 外国企業の誘致強化には訳がある。香港では〇九年に計六十九社が上場し、IPOに伴う資金調達額は総額約二千四百億香港ドル(約二兆八千億円)と米ニューヨーク証取などを上回り世界トップとなった。が、新規上場案件の大部分は中国企業によるもの。上海市場などの整備が進めば「中国の資金調達センター」としての優勢が弱まる恐れがあり、これが香港証取を国際化に向かわせている。 上海の台頭に対する警戒感が香港で一気に高まったのは〇九年三月。温家宝中国首相が主宰する国務院常務会議で、二〇二〇年までに上海を「わが国の経済的実力と人民元の国際的地位にふさわしい国際金融センター」に発展させるとの方針が決まったためだ。この一環で、上海証取は今年中にも外国企業の上場を認める新たな株式市場「国際板」を設けることになっており、英金融大手HSBCなどが上場に意欲を示している。

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