「インド・ブーム」が復活しつつある。二〇〇七年度まで三年間、九%台を続けた経済成長率は〇八年度、世界金融危機とムンバイ同時多発テロで六・七%に落ちた。今年度(〇九年四月―一〇年三月)も当初は四%台への減速さえ見込まれていたが、夏以降、国内外・官民の専門機関は競うように予想値を上方修正。年明け一月一日には首相府経済諮問委員会のC・ランガラジャン委員長(元インド中央銀行総裁)から「八%成長も可能。一〇年度には九%台を回復か」との声も出た。 実体経済は好調だ。日用消費財や携帯電話への需要は景気後退局面でも衰えなかったし、一度は低迷した不動産や自動車などの販売も、金融危機からいち早く立ち直った金融機関がローン枠を再拡大させると復調。この個人消費と、インフラ整備や税制優遇といった政府の景気刺激策を背景に、企業も投資を活性化させた。鉱工業生産や輸出額、法人税収はすでに前年同期比で増加に転じている。 海外からの視線もまた熱を帯び始めた。昨年十二月、独フォルクスワーゲンがスズキとの提携を打ち出したのは、インド市場でスズキが五〇%以上のシェアを握ることが大きい。一月にニューデリーで開かれたモーターショーでも、トヨタ自動車がインド向けの新型小型車「エティオス」を発表。本田技研工業も同様のプロトタイプを世界で初めて披露した。「まずインドに 次に世界へ」というトヨタのキャッチコピーは、インド事業に取り組む外国企業の姿勢をよく表している。

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