エチオピアが拠点となるアフリカの金融ビジネス

執筆者:竹田いさみ2010年2月号

 モカ・コーヒーの故郷エチオピアで、美味しいコーヒーが飲めるお店を捜し求めて辿り着いたのは、首都アディスアベバ市内にあるカフェだった。道路を挟んだ空き地には競り売りにかけられる山羊が群れており、異国情緒は満点。まるで映画の一コマを思わせた。 モカという冠は、アラビア半島南西部にあるイエメンのモカ港から積み出されたことに由来する。また、コーヒーはもともとイスラム教徒が夜間の勤行を助ける眠気覚ましとして使ったものであり、十五世紀初頭にはイエメンのモスク(イスラム寺院)で飲まれるようになっていた。 それならコーヒーの原産地はイエメンかといえば否である。それはエチオピアの高原地帯カファとされ、種や苗木が紅海を渡って対岸のモカ港に持ち込まれたと伝えられる。原産地の観点からみれば、モカ・コーヒーはエチオピア・コーヒーと呼ばれてしかるべきだと主張する向きもある。 エチオピアはコーヒーの大生産国であり、また優秀なマラソン走者の輩出国というイメージも強いが、実はアフリカ大陸の開発でも重要な役割を果たしている。 首都アディスアベバにはアフリカの地域協力機構「アフリカ連合(AU)」の本部があり、ヨーロッパの有力銀行が支店を構える。広大なアフリカ大陸を見渡してみると、東アフリカの内陸国であるエチオピアは政治的に最も安定しており、治安もよい。

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