モンゴル外相も心配する「朝青龍引退」

執筆者:スコット・ヒューストン2010年3月号

[ウランバートル発]モンゴル出身の横綱・朝青龍(本名=ドルゴルスレン・ダグワドルジ)の突然の引退表明は、日本のみならず海外でも大きなニュースとなったが、どこよりも衝撃を持って受け止められたのは、ここモンゴルでだった。 あげく、モンゴルでは、一大スキャンダルといっていいほどの騒ぎになりつつある。 日本相撲協会調査委員会はかねて朝青龍の「暴行問題」の解明を進めていたが、理事会が開かれた二月四日、朝青龍は引退を決めた。記者会見では、「休みたいという気持ちもある(中略)けじめをつけるのは僕しかいない。自分にとっての運命じゃないかと思う」と語ったが、モンゴルでは、もっぱら、引退は相撲協会から強要された結果であると受け止められている。会見での発言も、相撲協会からの指示に違いないと考える人が少なくない。 モンゴルの高官は感情を露にし、モンゴルメディアも一斉に非難の声をあげている。 その見立てはこうだ。「暴行事件」の真相が明らかでない段階で相撲協会が二十九歳の横綱を引退に追い込んだのは、すでに二十五回の優勝を達成している朝青龍が、日本相撲界の伝説的存在である横綱大鵬の三十二回という記録を塗り替えてしまう恐れがあったからだ、というものだ。

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