場外戦にもつれ込む「小沢捜査」の内実

執筆者:武藤修2010年3月号

小沢氏を土俵際まで追いつめながら起訴を見送った検察。だが、本当の闘いはこれから始まる。「政界の最高権力者」となった小沢一郎民主党幹事長と検察の対決は、東京地検特捜部が政治資金規正法違反容疑で刑事告発されていた小沢氏を不起訴としたことで、小沢氏の勝利に終わった。だが小沢氏の元私設秘書で陸山会の会計事務担当者だった石川知裕衆院議員ら三人が起訴されたことから、小沢氏は眉間に向こう傷を負うこととなった。 小沢氏の資金管理団体「陸山会」が二〇〇四年十月に購入した東京都世田谷区深沢の土地代金を巡る事件のポイントは四点だった。第一に、石川氏が土地代となった四億円を政治資金収支報告書に記載していなかったことが、故意だったかどうか。第二は、不動産購入費の原資に胆沢ダム工事を受注した水谷建設などゼネコンからの裏金が含まれていなかったか。第三は、陸山会が土地を購入した日、土地購入費とは別に四億円の定期預金を組み、これを担保に銀行から四億円を借り入れたのは土地購入費の四億円を隠すための偽装工作ではなかったか。そして第四が小沢氏関与の有無だった。 特捜部は、昨年三月の西松建設違法献金事件で石川氏を複数回参考人聴取する過程で、「石川は逮捕すれば自供する」との感触を得ていた。やや気弱で論理的に矛盾すると説明に窮してしまう石川氏の生真面目な気質に気付いたためだ。実際、石川氏は逮捕後すぐに故意の虚偽記載を認め、数日後には「小沢先生の了承を得て虚偽記載した」と小沢氏の関与を示唆する供述をした。石川氏の起訴はこれが決め手となった。政治資金規正法は「政治と金」の「透明性」確保を立法趣旨としており、四億円もの大金を政治資金収支報告書に記載せず故意に裏金化していた時点で十分に罰すべき犯罪だからである。

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