朝鮮半島に“劇的変化”は訪れるか

執筆者:黒田勝弘2010年4月号

 一九八五年、韓国で超ベストセラーになった『丹』という小説がある。そのなかで超能力者の仙人「羽鶴道人」が未来予知能力を発揮して「韓国の大運三千年」を占う。 それによると朝鮮半島は十五年以内に韓国主導で南北統一し、その後、統一韓国は北方大陸に進出し、古代・高句麗の地を回復する。さらにモンゴル、シベリア、バイカル湖、カムチャツカ半島にまで領土を広げアジアの巨大国家になる。そして世界史はアジアが中心となり韓国、中国、インドが世界の主役になり、とくに韓国は現在のアメリカのような役割を果たす……。 一九八八年、ソウル・オリンピック開幕を前に韓国の最有力紙『朝鮮日報』(九月六日付)のコラム「太平路」は「大陸へ行こう」と題し、韓国にとってオリンピック主催の意義を次のように謳い上げた。「(広大なユーラシア)大陸がわが民族を呼んでいる。モスクワから、沿海州から、吉林省から、北京から、山東から、揚子江から、広東から、ハノイから、プノンペンまでわが民族の力量、韓国の力を必要としている。大陸の無限の地平を駆け、わが民族の古来の地に未来の空間を拡張しよう」 二〇〇二年、日韓共催のサッカー・ワールドカップで韓国が全国民的な熱狂のなかで四位になった時、韓国では「経済も世界の四強へ」というキャンペーンが官民挙げて展開された。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。