お役所の「通知」について考える

執筆者:原英史2010年4月号

今後、我が国の公共施設では、全面禁煙が実施されるらしい。ただ、“決めた”のは国の立法機関たる国会ではなく、「お上」だった――。 二月中旬、「公共の場 全面禁煙を」との報道が突如流れた。ある新聞の一面トップで報じられるほどの大ニュース扱いだったが、中味をよく見ると、「厚生労働省の通知」に基づくもので、罰則はかからないとの話。何だか腑に落ちない方も多かったのではないか。 事実関係を整理すると、二月二十五日、厚労省から全国の知事や市長らに対し、「受動喫煙防止対策について」と題する「通知」文書が出された。そこに「多数の者が利用する公共的な空間については、原則として全面禁煙であるべき」と書いてある、という話だ。 厚労省は何の権限があってこんな「通知」を出したのかというと、根拠は、二〇〇二年に制定された健康増進法第二五条。「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」 いわゆる「努力義務」規定で、措置を実施できなくても罰則はかからないのだが、どう努力したらよいのか、この規定だけではよく分からない。そこで、厚労省が、健康増進法施行に際し(〇三年)、「受動喫煙防止対策について」の旧版を発出。条文の解釈として、「全面禁煙」と「分煙」のどちらかを「施設の態様や利用者のニーズに応じ」てとる必要がある(つまり、全席喫煙ではダメ)と明確にし、地方自治体に「通知」して、「関係方面に周知」するよう求めていた。

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