霞が関が企む「天下り斡旋NPO」の皮算用

執筆者:白石均2010年4月号

「退職勧奨はやらざるをえない」。三月初旬、仙谷由人公務員制度改革担当大臣や前原誠司国土交通大臣らが相次いでこう発言した。天下り規制に関する従来の論議を知る人にとっては、驚くべき話だ。 民主党はこれまで、「早期退職勧奨(いわゆる肩たたき)こそが天下りの根源」と主張してきた。かつて安倍内閣が天下り規制法案を提出した際には「早期退職勧奨禁止が入っていない」と政府案を徹底攻撃。また、昨年夏のマニフェストの詳細版「INDEX2009」でも「早期退職勧奨を廃止します」と明記していた。 こうした経過を考えれば、二月十九日に閣議決定された「国家公務員法等改正案」でも、本来ならば、いの一番で「退職勧奨禁止」が盛り込まれるかと思われた。ところが、法案を見ると、天下り関連では「再就職等監視委員会」を「再就職等監視・適正化委員会」に名称変更するなどの技術的な改正ばかりで、退職勧奨のタの字も出てこない。そして、それを裏打ちするかのように、「退職勧奨継続」という方針が表明されたのだ。 従来の退職勧奨は、天下りの斡旋とセットで行なわれていた。たとえば、部長ポストにいてその先は望めない官僚に対し、次官や官房長が、「○○法人理事のポストを用意したので、退職しないか。給与は現状保証で、もちろん秘書・個室・車付き」といった形で持ちかけていたわけだ。ところが、鳩山内閣では、「府省の斡旋」つまり次官や官房長が天下り斡旋をすることは認められない。天下り斡旋抜きで単に「退職しないか」と言われるのでは、官僚にとっては何の旨味もない話だ。天下りを伴わない退職勧奨などありえるのだろうか。

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