「世界の工場」に広がるアフリカ・タウンの勢い

執筆者:竹田いさみ2010年4月号

「世界の工場」として知られる中国・広州にアフリカ人街があると聞き、訪ねてみることにした。地下鉄二号線の終点「三元里」。「小北路」という市内の大通りにもアフリカ人があふれ、アフリカ貿易センターのビルが屹立していたが、ここは別世界だ。噂に違わずアフリカ人だらけである。いずれも広州の北西地域にあり、アフリカ系黒人も多く住む米国ニューヨークのブルックリンを彷彿させることから、「アジアのブルックリン」と呼ばれている。 中国にビジネス・チャンスがあると信じ、ナイジェリア、エチオピア、ケニア、タンザニア、コンゴなどから、大勢のアフリカ人が飛行機を乗り継いで広州にやってくる。広州の白雲国際空港から三元里までタクシーを飛ばせば約二十分だが、香港に到着したアフリカ人は迷わずバスに飛び乗る。所要時間は三時間。格安のバス情報はすでに彼らの「知るところ」であるらしい。「小北路」のアフリカ貿易センタービルを覗いてみた。各フロアにガラス張りの小さな事務所が整然と並び、アフリカ人と中国人がアパレルや電気製品などの買い付けとアフリカ向けの輸出業務を行なっている。アフリカ系のバイヤーを呼び込む仕掛けとして、この貿易センターが広州市政府の肝いりで設立されたことは一目瞭然だ。ここで貿易に従事するアフリカ人は合法的に長期滞在している商人であり、中国とアフリカとの貿易関係を演出する「表の窓口」として機能している。

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